空港にて


年とともに音楽から遠ざかっていたが、呪術廻戦と出会って3ヶ月ほど経った頃には、YouTubeで呪術の曲をヘビロテで聴くようになっていた。問題は音楽だけじゃなく、いわゆるネタバレサイトも数多く上がって来るようになったこと。コミックスに何とか追いついた2023年12月頃、少し前からそこは五条悟の死と復活の可能性ネタでお祭り状態だった。絶対に見るまいと思っていても、否が応でも視界に入る衝撃的な見出し。血を流す五条の死に顔をトップに据えるなんてことがあり得るのか。

そんな中、妙に違和感のある “空港” という言葉がやけに目についた。こんな時に空港って何だ。こらえきれずサイトのいくつかをチラッと覗いてしまった。どうやらその “空港” とやらで五条が今後の行き先を選択するらしい。北は全く新しい自分、南は過去の自分。とにかく私はこんな風に理解してしまった。地獄はここから。

続く25巻で再び悟を拝めたのに、それがいつまでも続かないのを知っている辛さ。何とか戻って来てもらわなければ。得意の妄想が暴走する。

硝子の反転術式でも復活はムリっぽい
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全く別の形で戻るしかない
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あの作者のことだから、読者の心を完全に打ちのめすような姿だよな
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呪霊とか、呪骸とか?
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パンダだ! 失われた核のひとつとなるのだ(どうやってかは知らんけど)

この妄想地獄で私はある決意をした。
“空港” に着いたら自分自身の目で五条の行き先を見極めてみせると。

そして待ちに待ったコミックス26巻。表題などには目もくれず、あの残酷な場面に備えつつ、震える指でひたすらページをめくる。
「空港?」
突然予想外の世界が広がった。一瞬ページを飛ばしてしまったか、落丁なのかと思った。何でいきなり空港なんだ。しかも想像していたのと全然違う。”飛んで行った飛行機は北の方角…” って、飛んで行く飛行機なんてどこにもない。私は何を、どんなヒントを探せばよいのか。まるでキツネにつままれたようだった。身構えていた場面はその直後にやって来た。オワタ…

ネタバレサイトなんて絶対見るものじゃない。少なくとも私のようなど素人が手を出す領域ではない。必ずしも真実だとは限らない情報を先に頭に入れることは、本来味わえたはずの感動や驚きを得る機会を失ってしまうということ。妙なバイアスがかかり、本来見えるはずのものが見えなくなる可能性があることをきちんと理解しておくべきだ。

それから何度も26巻を読み返し、その内容を反芻し、ある日突然目が覚めた。
「みんな制服だよな」
考えてみれば、あそこでの会話には生前の五条が知り得ない事実も含まれていた。『これが僕の妄想じゃないことを祈るよ』と彼は言ったが、確かにあれは妄想なんかじゃなかった。私はようやく気がついた。五条悟はあそこから飛び立つのではなく、あの空港に降り立ったのだと。あらためて26巻を手に取り、ゆっくりと、心静かにページを繰る。答えは最初からそこにあった。

236話 南へ

このエピソードタイトルは、五条悟が表紙となっている26巻の表題ともなっていた。ネタバレなんて本当に見るもんじゃない。そしてタイトルはちゃんと見るべきだ。

さて、自分だったらどの方向を選ぶだろう。北に行く場合、今の記憶を持ったままなのだろうか。だったら少しはまともに生きられそうだが、オオアリクイとかサバとかムラサキウニとか、人間じゃないものになるのはゴメンだ。なら南かと言えば、私の人生で戻りたいと思えるような場所がどこかにあっただろうか。楽しそうに笑う悟たちの姿を見て、泣いていいのか笑っていいのかわからなくなる、そんな “空港” だ。

Satoru is everything



五条悟が誕生した時点で呪術廻戦の勝ちは決まっていた

なんてね。まあ要するに、五条悟というキャラクターが生み出された時点で、呪術廻戦の成功は決まったと思うんだ。もう何年もマンガやアニメを見てないから単純に比較はできないんだけど、今まで目にしてきた中で彼ほど特異で魅力的なキャラクターはいない。何と言っても、とにかくかっこいい。

五条悟なんて聞いたこともなかったのに、USJで見かけた5000円近くする彼のポップコーンケースを思わず買っちゃいそうになるほどかっこいい。包帯で素顔も見えないのに、恐るべきオーラだ。

だけどその魅力は外見だけじゃない。
性格悪いとか軽薄だとか言われてるけど、ホントにそうなのか。むしろ人として一番まともなキャラだったんじゃないかって私は思ってる。

生まれた時から別格だったわけだし、そりゃ多少はおかしくもなるわな。けど懐玉・玉折で描かれた学生時代は、呪術師であること以外私らと何ら変わりない。時に悪ふざけもする、ごく普通の眩しい青春だ。あのルックスだからモテはしただろうけど、遊んでいるようにも見えない。本気で女性と向き合ったことなんてないんじゃないかな。男女を問わず本音をさらけ出せた可能性のある相手は、結局夏油だけだったんだろう。

ちゃらんぽらんはあくまで表面上のこと。すべてを見据えて行動する賢さが見え隠れする。恵の能力を見極めたうえで、喜久福買ってドンピシャなタイミングで助けに現れる。外見上のかっこよさとちゃらんぽらんさ、内面の優しさと淋しさ、賢さと危うさ、それらが絶妙に入り混じってできた五条悟は、やはり唯一無二の史上最高のキャラクターだ。

Satoru is everything.
呪術廻戦は五条悟がすべて
(英語の使い方合ってる?)
彼の代わりは他の誰にも務まらない。

五条の死にざまは記憶がぶっ飛ぶほど衝撃的だった。悲惨すぎて涙も出やしない。あそこまでやられると、もはや清々しいぐらいだ。😭←泣いてるやん
ストーリーの先読みはことごとく外していたが、悟はロクな終わり方をしないという予想だけは当たったことになる。考えていたのとは全く違った形だったけどね。彼が復活することを最後まで期待してたけど、そうはならなかった。

いいよ。あそこまでやられたら諦めもつくってもんだ。いなくなっても残されたみんなを、呪術廻戦を導いてくれてありがとう。本当にありがとう。

だけどさ、今更だけどさ、みんな最後にもう少し彼のことを思い出してくれても良かったんじゃない?