ツダケンに無理やり糸を結ぶ

ツダケンこと津田健次郎さんと出会ったのは、今から4年ほど前の『最愛』というドラマだ。2度目の出会いは2023年4月期の日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』で、彼の演技に号泣、この時初めて津田健次郎という名前を認識した。すごい役者さんなのにさほど知られていなところを見ると、小劇場系で活躍する実力派俳優かなんかだろうが、これを足掛かりに絶対に世に出てくるな、などと批評家みたいなことを考えていた。

2023年と言えば、アニメの呪術廻戦第2期が7月から始まり、私が呪術の虜となった年でもある。配信経由で放送に追いついた頃にはすっかりななみんラブだったのだが、ななみん=津田健次郎であることに全く気づいていなかった。声優にまで興味の矛先が向いていなかったせいもある。

エンドロールのキャスト名に目が行くようになり、「七海健人 津田健次郎」を見た時には全身に鳥肌が立った。これは何かの思し召しに違いない。私とななみん(=ツダケン)は赤い糸で結ばれていたのだ!
この勝手な思い込みのおかげで私は今ここにいる。

津田健次郎さんがツダケンと呼ばれる人気声優であることを知ったのは、そのあとのことだ。声優と聞いて驚いたのだが、今ではその枠にとどまらない活躍ぶりである。ここまでブレイクしたのは、呪術廻戦のヒットとななみんの声を担当したことが少なからず影響しているだろう。対談番組にも多数出演されていたが、そこで必ず求められるのは、例のななみん最期のセリフだった。ファンとしてはうれしい限りだが、津田さんにしてみたらどうだったのだろう。

不遇時代を語るインタビューで、アニメ『遊戯王』の海馬の声を担当していたことも語っていた。遊戯王のストーリーは知らないが、テレビで流れていたのを目にした記憶はある。海馬という名前が連呼されていたので耳にも残っていた。驚いたことに、主役の声を担当していたのは俳優の風間俊介さんなのだと。当時まだ売れていなかった彼らが、収録前に喫茶店で時間をつぶしていたなんていう話も聞いた。それが今や二人とも誰もが知る俳優になっているとは。それだけでも感慨深いものがある。
NHKの大河ドラマのオープニングで、二人の名前が続けざまに現れた時には「よくがんばったなぁ」と泣きそうになった。親かよ。

来季のドラマでツダケンは主役の一人を演じるという。とうとう主役かぁ。感慨はさらに深まる。声優、ナレーター、役者、何から何まで、犬の声までやってしまうとは。
この間までNHKで放送されていた『シバのおきて』では柴犬の声を担当していたのだが、これがまた鳥肌もの。死んでしまったツダケン柴が仲間の前に現れて言った言葉がこれ。
「福助…後は頼むな…」
やるなNHK。言い方も間の取り方も完全にななみんだった。実際どれだけの人がこれに気づいたかはわからないが、呪術廻戦がNHKがオマージュするほどのメジャーな作品となったことと、ご本人的には複雑な心境なのかもしれないが、”ツダケンといえばななみん” が世の人に浸透していることが、私としてはとってもうれしかった。

津田健次郎さんとは赤い糸で結ばれているどころか、今にもちぎれそうな赤くもない細糸を無理やり結びに行っただけのことだ。それでも私はツダケンの今後の活躍をお祈りしている。勝手にね。

ナ、ナ、ミーン!


私の推しは、”ななみん※”こと七海建人だ。悟や悠仁への愛に隠れてはいるが、私にとって五条悟はもはや神であり、悠仁はかわいい息子なので、そこんとこはちょっと見逃して欲しい。結婚するならもちろん”ななみん”なんで。

ななみんは呪術廻戦の中でも屈指の人気を誇るキャラクターだ。その人気の原動力のひとつは、虎杖悠仁に”ナナミン”と呼ばせたことにあると私は睨んでいる。これを考えた作者は天才だよ。七海を一気に親しみやすい愛すべきキャラへと変えたのだから。

考えてもみて。渋谷のビルの屋上で悠仁が叫んだ言葉が「七海さ~ん!」だったらどう?「七海せんせ~!」ならまだかわいげがあるけど、「ナ、ナ、ミーン!」の破壊力には到底及ばないんじゃないかな。もっともこれは海外でも人気が高いことの説明にはならない。が、ニュアンス的なものは何となく伝わるんじゃないかと、とりあえずは思っておくことにしよう。

私にとってのななみんの魅力は、あのツンデレな感じかな。クールで現実的なのに、本来の優しさが随所にはみ出ちゃうのがカワイイ。なんだかんだ言いながらパン屋のおねえちゃんを除霊してあげるし、悠仁を術師だと遠回しに認めるとこなんて、泣きそうになったわ。

でも、渋谷での最期の場面は泣かなかった。あまりの残酷さとショックで泣くことも忘れた。ななみんの死とそれに続く野薔薇のシーンで私は完全にフリーズする。コミックスでもアニメでも。テレビ放送直前にコミックスがアニメを追い越していたのだが、もしそうでなかったら、アニメを観ながら私の心臓は止まっていただろう。

あれから何度かこのシーンを目にしてきたが、辛すぎて痛すぎて、泣くどころではなかった。つい先日、映画の “渋谷事変X死滅回遊” を観るまでは。この時、ななみんに後を頼まれて初めて泣いた。映画館でボロボロ涙を流す自分に驚いた。

かつては”聖地巡礼”とやらをする人たちの気持ちがよくわからなかった。が、呪術廻戦と恋に落ちてから、ようやくその気持ちがわかるようになった。悠仁やななみんが走り戦った渋谷の街を見てみたい、歩いてみたい。そんな気持ちがどんどん大きくなってゆく。ななみんが最後の瞬間に夢見たマレーシアのクアンタンに行くことは夢のまた夢だが、渋谷ならもしかして…なんてことをついつい考えてしまうこの頃だ。

今から10年か20年後、もしあなたが東京メトロの渋谷駅構内で花束をささげ祈る老婆をみかけたら、そっと寄り添い共に祈りをささげてもらえれば幸いだ。

※作中で”ナナミン”と呼ぶのは虎杖だけで、ご覧の通り、表記としてはカタカナが正解。でも私は基本的に”ななみん”とひらがなで書くようにしています。この方がより優しく愛情も伝わる気がするので。その点、どうかご容赦ください。