5月、検診の月がまたやって来た。
4年前に急病で入院して以来、年に一度定期検診する羽目になった。予約があるとはいえ、採血やら超音波やら何かと時間がかかるから仕事は休む。検診結果を聞く日には半休を取る。どちらの日も楽しみはランチだ。お手製の弁当にはうんざりだから、こんな機会には絶対外食だ。どこで食べようかと数日前からプランを練る。去年は何を食べたんだっけ?
そうだ。
行ったのだ、呪術カフェへ。
コラボカフェなんて聞いたこともなかった頃、一度だけ “呪術カフェ” なるものに連れて行ってもらったことがあった。モニターにアニメのシーンが流れるちっちゃなスペースに、びっくりするほど高いけどさほど美味しいとも思えないメニュー。ランダムでもらえる色紙を持って座ったテーブルにはキャラの紙マット。レジ横あたりに並んだグッズはカフェで飲食した人だけが買えるのだと。色紙を求めて何食分も注文する理由はこれだったか。娘のためにパフェとジュースを二人分胃袋にぶち込み吐きそうになったという友人の話を思い出し、また笑った。こんなカフェはちょくちょく開かれると聞いたが、私はたぶん二度と来ないだろうと思った。
去年の4月、3年目の検診を迎える前に呪術廻戦展がやって来た。東京に遅れること約10か月。待ちに待った初日。初めてづくしですっかり舞い上がってしまったあの日。会場横に「待ち時間180分」とあったのがカフェだった。3時間待ちなんて序の口だってさ。並んでいるのはほぼ女子。カップルの姿もチラホラ。若さというエネルギーに気おされたが、本音を言えば私も入ってみたかったのだ。前に行った所の何倍ものスペースがあるし、何より本家本元原画の呪術廻戦展併設のカフェだよ。会場も私の中ではハイクラスな施設だし、原作が終わった(はずだった)今、私にとってはこんなことを味わえる最後の機会だと思ったから。
だから行ったのだ。展示が始まってひと月ほど経ったド平日、検査が終わった後に。ちょうどお昼時だったけど待ち時間は5分! よかった、予想通りだ。逆に悪目立ちしないか気が引けたけど、案外ひとりで来てる人もいたのでほっとした。悩んだ末に選んだ席は悟マットが敷かれたカウンター。オープンなスペース、ビル外の街並みも垣間見える。不慣れな私の緊張も少しほぐれ、まわりの真似して写真を撮りまくる。インスタなんてやってもいなかったけど、記憶がヤバいのでとにかく記録に残しておきたかった。店内にはアニメと映画で使われた楽曲がエンドレスで流れる。普段はお気に入りの2曲だけをYouTubeで聴くぐらいだったけど、呪術一色の世界の中で、次々と流れる曲に身を委ねながら過ごす幸せがわかった気がした。
この幸せが忘れられなくて、検診結果を聞いた帰りにまた行ってしまった。今度は悠仁の席。二度目ともなれば多少余裕もでき、時間をたっぷりとって楽しんだ。そしてそして笑うことなかれ、呪術廻戦展が終わる直前の6月のはじめ、三度目にして最後となるべきカフェを堪能した。ラストの席はやっぱりななみん。計6枚ゲットした色紙には恵だけが欠けたが悔いはない。思えばこの時が私の呪術人生の頂点だった。めちゃめちゃ楽しかった。めちゃめちゃ幸せだった。呪術のサイトを開くことも、開いたとたんに出鼻をくじかれることも夢にも思っていなかった頃だった。
あれから1年。今年もまた検診の時期が来た。1年はあっという間だけどカフェの思い出は遠い昔のように感じる。あれから展示はカフェを伴い全国行脚を続けていて、次は名古屋に行くのだと。すごいなぁと感心しつつ、ひとつのヒット作に乗っかって搾り取れるだけ取るみたいな風潮に気分が萎えてゆく自分がいる。MAPPA制作の呪術続編映像の再生回数がどうのこうのというニュースを見れば、「どうせまたアニメ化してマンガも更に続けっちゃったりするのよね」なんて思っちゃうわけ。私、どんどん性格悪くなってるよな。6月のアニメーション呪術廻戦展はしっかり行くくせに。
4年前の退院日、主治医だった若い医師が言った。
「来年の検診と診察を予約しておきますね。私も〇〇(私の苗字)さんも1年後のことはわかりませんけど、また来年。」
って、先生、気をつけた方がいいぜ。「ボクはこの病院にいないかも知れないけど、アナタはこの世にいないかもね。」って聞こえるぜ。(笑)
ウソウソ。まあこの世の中、何があってもおかしくないから。けど、去年までの3年間、先生も私もしっかり残ってましたよね。私は先生のことを密かに “彦星さま” と呼んでいるのだけど、果たしてこの織姫は今年も彦星様に会えるのかな?
会いたいな。会って「ではまた来年。」って言って欲しいな。
さてと、今年はどこでランチしようか。
